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【400字小説】谷間に8割

「相談があるんです」と
音彦はまり子に呼び出されて、
近所の飲み屋に入った。
二人は同じファミリーレストランで働いている。
音彦は社員、まり子はアルバイト。

「実は私、帆足さんと付き合ってるんです」

深刻そうな表情でまり子は言った。

「店長が知ったら、
どちらも辞めなきゃいけなくなるから、
バレないように注意してたんです。
でも昨日、ホームセンターで
一緒にいるところを見られてしまって。
その場はうまくごまかしましたけど、
店長は疑い深い人だから、
バレるのは時間の問題かな
って思うんですね。
でも、こんなことで仕事辞めるのも
バカバカしいし。
それでどうにかならないかと思って、
音彦さんに相談したいんです」

音彦はその話を2割しか聞いていなかった。
私服のまり子は肌の露出が激しくて、
ついつい注意力を奪われてしまったから。

「帆足のヤツがうらやましい」

飲み干したビールはいつもより苦かった。■
by nkgwkng | 2013-10-25 16:27 | 400字小説
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