【400字小説】風邪

「ごまかさないでよ。
さっきからサッカーばっかり見てて、
全然話聞いてないじゃない」

「ごめんごめん。
でも、すげえいい試合なんだよ。
お願いだから話しかけないでくれる?」

夫のその言葉を聞いた未夏は何も言わず、
シャワーを浴びて眠ってしまった。
流し台には、汚れた皿や鍋が残ったままだった。

翌朝。
未夏はひどい風邪をひいていた。
風邪は昨夜、未夏の怒りの陰に
こっそり隠れていたらしい。
夫はとても心配したが、
昨夜のこともあり、
未夏は夫を邪険にした。
夫は仕方なくいつも通り仕事に出掛けた。

薬は効かなかった。
それどころか悪くなるばかりだった。
病は心を弱らせる。
夫のことを腹立たしく思う一方、
ケンカしたまま死んだら嫌だなと、
少し思ったりもした。

昼下がり、夫が帰ってくる。
「心配だから早退してきた」と
照れ臭そうに言った。
それを素直に喜びたい感情と、
昨夜のことを許せない感情。
未夏の表情はぎこちない。■
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by nkgwkng | 2013-10-28 17:34 | 400字小説
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