【400字小説】5月

定年を迎え、
スマホデビューし、
お芝居を始めた。
セリフを覚えられない、
演技は大根
と散々で稽古に行くのが
億劫になった時期もあった。
5月のことだ。
仕事をしていた頃も、
その月が来ると憂鬱に襲われた。

でも芝居仲間から
「好きで始めたんでしょ」と叱咤激励され、
なんとか本番にこぎ着けた。
すごく緊張してメガネをするのを忘れて
舞台に出てしまったくらいだった。
すぐに気付いたけれど
お芝居を止めるわけにはいかないから
腹を決めて演じ続けた。
それが良かったのか
演出をした先生から
「さゆりさんは本番に強いネ」と褒められた。
だから残りの3ステージも
ゲンを担いでメガネをしなかった。
結果は◎。

今は公演を終えて、もぬけの殻。
またお芝居がしたい気持ちと、
セリフを覚える苦痛や
自分の演技力に不安を感じていて葛藤。
スマホは全然使いこなせない。
息子に操作を教わるが
すぐに忘れてしまっていけない。
やっぱりダメな私。
またいつもの5月病がやって来た。

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by nkgwkng | 2017-12-26 00:00 | 400字小説
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