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【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/110

110
イキルは東急デパートの脇に違法駐車した
自転車に乗って走り出す。
なんだか清々しい気持ちだった。
eastern youthに熱い生き様を見せつけられたし
ZAZEN BOYSには眠っていた原始的なリズムの記憶を
目覚めさせられた。
「刺激的なイベントだった」と
主催の友人にメールしようと思った。
無性に喉が渇いている。
そういえば昼休みにお茶を飲んでから
一滴も水分を摂っていない。
帰り道のセブンイレブンでコーラを買った。
店を出るなりペットボトルの蓋を開けてぐびぐび飲んだ。
一気に飲んだので喉が痛かった。
心臓はビートを刻んでいる。
イキルは生きていることに感謝する。
欠けた月がとてもきれいだった。(了)
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by nkgwkng | 2014-07-22 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/109

109
「怒ってる?」とシヌは
駅に向かう途中で彼氏に訊いた。
「怒ってなんかない」
カラオケの呼び込みに声を掛けられるが無視する。
「もしかして妬いてるんでしょ」と言うと
「ちげーよ」と彼氏が口を尖らせた。
ぬるい風が吹いている。
「貴様、浮気すんじゃねーぞ」
「やっぱ妬いてるんじゃん。
てか浮気なんてしない。
そっちこそしないでよね」
「俺のこと信用してないのか?」
駅前の信号は赤だ。ふたりは立ち止まる。
「してません。こないだだってチエちゃんに、
かわいいねって言ってたじゃん」
「あれは社交辞令だ」
また口喧嘩になりそう、そんな予感がした。
でもシヌは「やっぱりこの人が好きだな」と
ぼんやり考えた。(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-21 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/108

108
「我々は行きます。電車の時間もあるので」
シヌの彼氏はシヌの手を引っ張って行こうとする。
イキルはシヌの連絡先を訊けないかと思っていたが
そんな様子では隙がないと諦めた。
実はシヌもイキルとメールアドレスの交換をしたかった。
でも彼氏がいるので言い出せなかった。
彼氏の手を振り解いて
「握手してください」と言うのが精一杯。
イキルは「またどっかで」とシヌの手を握った。
女の子らしい小さい手だとイキルは思った。
男っぽいゴツゴツした手だとシヌは思った。
「それじゃあ」とそれぞれ右と左に別れる。
しばらくしてイキルは振り返ってみたが、
シヌは早足の彼氏に手を引かれ、
ネオンサインの中に紛れていた。(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-20 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/107

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そんな彼氏にイキルは言う。
「ザゼンボーイズ、メンバー間の
張り詰めた緊張感が心地良かったよ。
演奏がウィットに富んでいたりしてさ。
そんなところに知的さを感じたね。
あと鍛練されたサウンドだったなー。
ものすごく変拍子なのに息がぴったりで
よく合わせられるなと思っちゃったよ。
グルーヴ感がハンパなかった」
そう言ってもシヌの彼氏はぎこちなく笑うだけだった。
どうやらシヌと親しくなったことに嫉妬しているらしい。
うっすら不穏な雰囲気が漂う。
「ありがとうございます。
自分が褒められてるみたいで嬉しい」と
シヌの彼氏は言ったが、不機嫌さを隠しているのが
イキルに伝わった。(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-19 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/106

106
「私もそのTシャツ買いました。
ライブとても良かったので。
イースタンユース、私、初めてだったんです。
あんなふうに今を燃やすような演奏、観たことがないです。
一瞬一瞬に命かけているんだなって思いました。
心臓を鷲掴みされましたよ。
自分はあんなふうに命かけて
生きてるかなあって考えちゃった」
シヌの後ろで彼氏が所在なさげにしているので、
イキルは彼に目線を向けた。
それがわかったのかシヌは
「あ、ごめんなさい。この人、私の彼氏です。
私がザゼンボーイズ好きなのは、この人の影響です」。
すると彼氏は作り笑顔で会釈をした。(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-18 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/105

105
「ああ、まだ帰ってなかったんだ。待ってて良かったー」
声がする方に視線を投げるとイキルがいた。
シヌは一瞬恋人の存在を忘れて
「イキルさん!」と彼に駆け寄った。
「上で待っていてくれたんですね。
私、下で待っていたんです。
もう帰っちゃったかと思ってました。
お詫びをちゃんとしたかったんです」
「だから、それはもういいんだって。
Tシャツもほら、買えたしね」
イキルはそう言うとTシャツの裾を両手で引っ張った。
続けて「つい散財しちゃったけどさ」と
藍色のトートバッグから
ブルーの生地にカッパのイラストがプリントされた
Tシャツをもう一枚出してシヌに見せる。
それを受けてシヌは言った。(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-17 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/104

104
ふたりは別々にお互いが来るのを待った。
イキルは地上で彼女を待ち、
シヌは恋人と地下のライブハウスの
出入り口の前で彼を待っていた。
でもふたりは会うことができない。
時計を見ると午後10時前だった。
ライブハウスからあらかたの人びとが出た模様だ。
シヌは諦めて地上に上がろうとする。
「ごめんね。どうしてもビールをかけてしまったお詫びを
改めてきちんとしたかったんだ。
あとイースタンユースもとても良かったって伝えたかった。
やっぱり物販であの人がTシャツを買ってる時、
ちゃんと話しておくべきだったよ」
後悔の念を引き摺りながらシヌは階段を上がる。
息が上がる。
ビルの合間の夜空を見上げた、その時だ。(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-16 00:24 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/103

103
ライブは午後7時過ぎに始まり、
両バンドともに60分のステージを披露した。
どちらのパフォーマンスも圧巻で緊張感や生命力、
知性やユーモアがぎゅっと詰まっていた。
イキルはeastern youthのプレイに涙し、
シヌはZAZEN BOYSのビートに身体を揺らした。
「イースタン、泣けたー」とか
「ザゼン、痺れたー」とか言いながら
観客たちは地下のライブハウスから
地上へ続く階段をあがった。
eastern youthはZAZEN BOYSの
ZAZEN BOYSはeastern youthの
ファンをも魅了した。
インパクトや感銘、感謝や尊敬の想いを
持たせるには十分すぎるほどの演奏をした。
イキルはそのことをシヌに伝えたかった。
シヌもまた同じ想いだった。(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-15 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/102

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「ニワトリのTシャツのLサイズってありますか?
ああ、よかった。
じゃあそれ、1枚ください。

―――イキル、2500円出しながら言う―――

かっぱのTシャツもいいですねー。
お財布と相談して買うか考えますー。

―――財布をお尻のポケットに仕舞う―――

これ?
さっき女の子にビールかけられたんです。
勘違いしないでくださいよ、
俺が手を出したとかじゃないんです。
痴漢とかじゃないですから、ふふふ。
カウンターで振り向き様にぶつかられちゃったんですよね。
でも怒ってないよ、全然。
その子、かわいかったし。
って俺、何言ってんだ。
すいません。
あ、はい、Tシャツありがとうです。
早速トイレで着替えてきます!」(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-14 00:00 | eastern×ZAZEN @J

【イースタン×ザゼン小説】イキル、と、シヌ/101

101
「ビール、男の人にかけちゃった。
だから半分ずつしか入ってないの。
ごめんね。
ふたつとも飲んでいいから。
……ううん、怒られなかった。
すごいいい人だった。
え? 私も飲んでいいの?
だってこぼしたのあたしだよ。
そう? でもなんか悪いな。
……うん、じゃあ、遠慮なくもらう。
かんぱーい!
ってさっきも乾杯したけど、ははは。

―――しばらくの間―――

……出番、イースタンユースが先みたいだね。
楽しみだなー。
ああ、そう、見るの初めて。
ん? へえ、何年か前のフジロックで観たことあるんだー。
羨ましいな。
どんなだった?
あ、あ、やっぱり止めとく。
これから生で体感できるんだもんね。
つーか、ビールおいしいー!」(続く)
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by nkgwkng | 2014-07-13 00:00 | eastern×ZAZEN @J