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【掌編小説】猫になった私

家猫が私に何か言っている。
私には猫語がわからないので無視する。
しかし「にゃーにゃー」せからしか。
なので私も対抗して四つん這いになり、
「にゃー」を連呼する。
家猫は私の行動にビビり
本棚からジャンプして
箪笥の上に上ってしまった。
箪笥の高さは6尺ほど。
5尺8寸の私は背伸びしないと
家猫の様子を伺えない。
背伸びして様子を覗く。
するとごろにゃんと横になった家猫から
猫パンチが繰り出される。
私は額を何度も引っかかれて
頭を引っ込めた。

って何が面白くてこんな小説を書いているのだ。
クソだクソ。
誰も喜ばないし、誰も読みはしない。
実際のところ、ここ数日のアクセス数が減ってきている。
だからといって貴様らに迎合するような
文章を書くつもりはない。
読みたくないなら読まなくて結構。
さっさとここから立ち去れ。

……などと言うつもりはまったくありません。
どうかこんな僕の拙い文章を読んでみてください。
あなたが気に入る小説をいつか書きますから。
お願いです。
たまにはブログ、覗きに来てくださいね。
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by nkgwkng | 2012-08-31 18:28 | 掌編小説

【掌編小説】貴様、いい加減にしろ

ハンドルを握る魚々子(ななこ)の体は腐っていた。
出血もひどい。
白いTシャツの前側も後ろ側も
ほぼすべて赤で染まっている。
きれいな赤ではなく
ドス黒い赤。
首筋に噛み千切られた大きな傷口。
そこから流れる血は止まることがない。
Tシャツのその白が
赤に染められるのも時間の問題。
魚々子はどこへ向かっているのか。
それは自宅。
勤務先のペットショップから車で20分のところにある。
今日から2学期が始まったが、もう4時過ぎ。
小学1年の俊太郎は家に帰っているだろう。
無事かどうか知りたい。
なにせ街は彷徨える死霊であふれているから。
田舎だから東京に比べると数は少ない。
しかし奴らは必ずいる。
善良な市民に混ざりこんでいる。
魚々子はトリミングしていた犬の
飼い主に噛まれた。
同僚がレジ付近で襲われているのを助けようとして噛まれた。
でもなぜかすぐに奴らのようにはならなかった。
だからこうして今車を走らせている。
いつか奴らのようになる予感を感じながら……。
コンビニのある角を曲がると我が家。
玄関に突っ込みそうな勢いで車を停める。
「俊ちゃん!」
玄関を開けるなり息子を呼ぶ。
だが返事はない。
いつもだったら「おやつまだー」と言って
駆け寄ってくるくせに。
心配になって家中を探す。
リビング、いない。
トイレ、いない。
庭、いない。
二階へ上がる。
ほっ。
するとそこに俊太郎はいた。
寝室で眠っていた。
安心する。
が、一体自分は何をすれば良いのかわからない。
この子のそばにいてあげたいが
いつ自分が奴らのようになるかわからない。
奴らのようになったら俊太郎だろうが誰だろうが
構わずにその肉を食い千切るのだろう。
葛藤する。
か っ と う す る 。



……もう書くのが面倒くさくなった。
続きは自分で考えてください。

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by nkgwkng | 2012-08-27 23:09 | 掌編小説

【掌編小説】世界で一番短い小説

女体の先の分かれ目。
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by nkgwkng | 2012-08-25 21:44 | 掌編小説

【掌編小説】Blueberry Of The Dead

ブルーベリー畑で、こんにちわ。
そこできみと会った。
私はゾンビに噛まれて
白いTシャツの首元から胸までが血みどろ。
でももう痛くない。
私もゾンビになったから。
私はひどくきみのことが食べたくなって
きみに懇願した。

「きみのことがすごく好きだけれども
それ以上にきみ自身を食べたくなっちゃった。
一口でいいからその首元かじらせてくれない?」

そう言うときみは
「私はゾンビになりたくなんかない」
って言いながら私を抱き締めたよね。
ぎゅうっと。
その隙にあなたの首元をかじることもできたけれども
それはフェアじゃないなと思ってそうしなかった。
ちらりと見つめたきみのうなじがきれいだったよ。

高速道路の橋脚の下で
自動車の走り去る音に混じって
尺八の音を聴いたのは幻聴?
次に聴こえたのはフラメンコ調のギター。
きみが「こんな姿になってもきみのこと愛してる」
と耳元で囁いてくれたのも幻聴だったのかな?
そうだとしてもきみが私を抱き締めてくれたのは確か。
その感触やぬくもりはよぉく覚えている。
私も「愛してる」と言って泣いた。
もうさっきまでの関係に戻れないことを悔やんだ。
それならばいっそのこと、きみをかじって
私と同じにすれば良かったのかもしれない。

きみが拳銃を私の眉間に突き出したことには驚かなかった。
私はこれ以上ウイルスが身体を侵したら
理性がなくなっていよいよきみを襲うだろう。
そんなことになるんだったら
きみに撃たれて死んだ方がマシだと思った。
きみの右手の人差し指がトリガーに掛かって
あとはそれを引けばいい状況になったとき思い出したことがある。

きみと手を繋いで芝生に寝転んだ、夏のこと覚えてる?
空がひどく青すぎてまぶしかったね。
私たち、女同士で手を繋いでいたから
ほかの人はどう思ったのだろう。
私はいつも人の目ばかり気にしていた。
でもきみは人の目も憚らず私を愛してくれたね。

でもきみは私に向かってトリガーを引かなかった。
きみは銃口を口に突っ込んだかと思ったら
トリガーを引いた。
きみの頭が壁に投げつけたトマトみたいに飛び散って
私は返り血を浴びた。
ねえ、そんなのってズルくない?
なんで私を残して逝ってしまったの。
私もきみのあとを追いたくて
銃先をこめかみに当ててトリガーを引いたよ。
でも空砲だった。
弾は一発しか入ってなかったんだね。

ブルーベリー畑で、さようなら。
そこできみと別れた。
私はゾンビに噛まれて
白いTシャツの首元から胸までが血みどろ。
でももう痛くない。
私もゾンビになったから。
私はひどくきみのことが恋しくなって
頭が吹っ飛んだきみに泣きすがった。
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by nkgwkng | 2012-08-22 23:54 | 掌編小説

【掌編小説】狂っているのは、きみ

きみの気に入る小説を書きたいと思うのだけれど
何も書けずにいる。
何を書いたらきみは喜んでくれるかな。

きみとはきみのこと、
人とはちょっと違った名前を持つきみのこと。

僕が書けるのは
暴力的で血みどろで殺伐とした小説しかない。
あとは精神的に重い小説とか。
きみが気に入るような小説は書けそうにないんだ。
誰かを殴ったり、誰かが殺されたりする小説を
きみは読みたがらないだろうし、
僕としてもそんなものを
きみに読んでほしいとは思わない。

なんとかきみが気に入る小説が書きたくて
パソコンに向かっている。
自分でも書けるんだと無理やり思い込んで。
だけれどもやっぱり何も書けないや。
猫を殺したり、身ごもった女の腹を蹴飛ばしたり
そんなことしか思いつかない。

こんな僕は少し気が狂っているのかもしれない。
ほんの少しだけ人とは違うんだ。
え、ほんの少しだけじゃないって?
いいやそれはきみの思い過ごし。
僕が狂っているのは少しだけさ。
精神科の先生も太鼓判を押してくれている。
「病気はよくなってますよ」って。

精神科の病院に入院したことあったよね。
あの頃は確かに狂っていた。
自殺未遂したりしたし。
この僕がこの世に存在していたことを消滅させたくて
洋服やらCDやら身の回りのものは
すべて捨てたり売ったりした。
実をいうときみからもらった手紙も捨ててしまった。
誰の記憶にも残らないように死にたかったから。
そうすれば誰の記憶にも残らないと思ってたから。

僕は自殺未遂をして死ねなかったけれど
実際は死んだのと同じだと思う。
自殺未遂をして一旦人生はリセットされた。
僕は人生のリセットボタンを押したんだ。

ほら、こんなくだらないことしか書けないだろう?
僕には才能がないんだ。
それがわかっているのに書きたくて仕方がない。
僕の書いたもので人々を驚かせたり感動させたりしたい。
そんなことできやしないのに。
この間と同じようなことしか書けない。
今日はもうやめるよ、書くのは。
でもまたきみが気に入るような小説を書くようにしてみるさ。
その時はメールでもするよ。
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by nkgwkng | 2012-08-21 18:22 | 掌編小説

【掌編小説】全部お前のせい

いくら待っても奴はやってこなかった。
ケータイに電話しても出ないし。
いらいらして20分で煙草5本も吸っちゃった。

5回目の電話でやっと奴に電話が繋がる。
「あれ? 約束、明日じゃなかったっけ?
明日だと思い込んで、寝てたよ」
「寝てたじゃねえよ、この野郎!」
と言いたかったが俺は気が弱いのでそんなことは言えない。
奴は俺にとって大切な友達だし。

友達に憎悪を覚えるってなぜなんだろう?
なんで俺は人に寛容になれないほど
心が荒んでしまったのだろうか?

「約束、今日だよ。
まあ別にいいや。
じゃあ明日も同じ時間改札で待ってる」
そう言って俺は電話を切った。

と書いて俺は何が書きたいのだろうかと思う。
またクソみたいな文章書いてる。
同じことの繰り返し。
俺は絶望する。
自分には才能がないということに。
どうしたら作家になれる?
そんなことばかり考えている自分が悲しい。
野球へたくそな子どもが
自分の才能のなさもわからず、
ひたすら練習に励んで
「プロ野球選手になりたい」
って言っているようなものだ。
俺には才能がない。
俺には才能がない。
せいぜいお前の気持ちを害することができるくらい。
でも本当は愛してほしいんだぜ。
そこんところよろしく。
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by nkgwkng | 2012-08-20 18:22 | 掌編小説

【掌編小説】 何も書くことがない……

夏。
クーラー。
娘は昼寝中で妻は横になってテレビを見ている。
私はといえば、麦茶片手にパソコンに向かっている。
何も思い浮かばない。
何も書くことがない。
それでも私は書かなければならない。
そんな強迫観念にかられてキーボードを叩く。
タッタタタカタカタタッ。
家猫が鳴いた。
妻に何か言っている。
私には猫語がわからないが
妻にはわかるらしい。
「にゃー」
「まだごはんじゃないよ」
「んにゃー」
「さっきあげたばかりじゃん」
「にゃーん」
「寒い? クーラー切ると暑いんだもの」
「おにゃ~ん」
「はいはい、よしよ~し」
家猫を撫でる妻。
「かわいいねえ」
「んにゃ~ん」
幸せとはこんなひと時のことをいうのかもしれない。
小説で飯が食いたいなどと
夢のようなことを言っている私は傲慢だ。
ささやかな幸せを前にするとそれが浮き彫りになる。
「にゃーにゃー」
「なんて言ってんの?」と私。
「ごはん、カリカリのじゃなくて
缶詰めのヤツが欲しいみたい」と妻。
クーラーの作動音と
娘の寝息と
家猫の鳴き声が合奏している。
幸せなひと時。
これらを前にして私は何を書いたらいいのだろう。
何も書くことがない。
立派な大人になりたい。
仕事ができる男になりたい。
頼りがいのある夫でありたい。
尊敬される父でありたい。
そんな日常の小さな力みが私の首をしめている。
ささやかな幸せで満足すればいいのだ。
小説なんて書かなければいい。
私は覚悟ができないでいる。
小説を書くことをやめることなんてできない。
それが自分の首を真綿で絞めるような行為だとわかっていても。
何も書くことがないのに書いてしまう。
これは強迫観念と言う名の病気だ。
書くのをやめることが怖い。
夢はなんですか、と聞かれて
何も答えられない自分だったら怖い。
そんな強迫観念にもう十数年悩まされている。
何も書くことはないのだ。
伝えたいメッセージなんて何もない。
それなのに400字の原稿用紙を埋めることに必死だ。
あ、テレビに剛力彩芽が出ている。
妻が「剛力彩芽さん出ているよ」と言う。
私はついパソコンの手を止めてテレビを見る。
かわいい。
幸せだ。
このささやかな幸せで満足できれば言うことのない人生なのに。
妻も私を労わってくれるし、
娘も私を慕ってくれている。
これ以上の幸せがどこにあるというのだろう。
何も書くことはないのだ。

それでも私は……。
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by nkgwkng | 2012-08-18 16:09 | 掌編小説

お盆休み

両親に会いにゆく。
ビール。
笑う。
話す。
太る。
温泉。
朝寝坊。
インターネットはナッシング。
運転。
ラジオ。
高校野球。
帰宅。
そんなお盆休み。
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by nkgwkng | 2012-08-15 21:27 | 雑感<日記>

【掌編小説】お前の都合など関係ない

撲殺してやろうかと頭に血が上った。
渋谷スクランブル交差点。
奴の肩が俺の肩に触れた。
その勢いで俺はよろけ、
肩にかけていたトートバックを落とした。
「てめえ、どこ見て歩いてんだよっ」
と言いたい俺だったが
気が弱いのでそんなことは言えない。
しかも奴は格闘家風の強面だった。
左肩にボブマーリィの顔を彫ったタトゥーが目に入った。
暴言を吐かなくて良かったと俺は安堵のため息をつく。
しかし、「すみません」とは謝りたくない。
何も言えないまま俺は奴と数秒間見つめ合った。
「てめえ、何ガンつけてんだよ」
と言いたい俺だったが
気が弱いのでそんなことは言えない。
見つめ合っている数秒間
奴が「てめえ、どこ見て歩いてんだよ」とか
「てめえ、何ガンつけてんだよ」
と因縁をつけられたらどうしようかと気が気ではなかった。
だがそれを悟られるわけにはいかないので
瞬きもせずに奴を見つめた。
すると意外なことに奴が言ったのだ。
「ぶつかってすみません」
俺はずっこけそうになるが表情は変えない。
「いえ、こちらこそ。そのタトゥー、カッコいいですね。
僕もボブマーリィ大好きです」
気が付くと俺の表情は緩くなっていた。
奴も照れくさそうに笑って「ありがとうございます」と言った。
意外といい奴じゃないか。
俺は思わず両手を広げてハグを奴に要求していた。
奴は少し戸惑った表情をしたが
構わず俺は奴をハグした。
そのあとさらに握手をしてさよならを言う。
「じゃあ、気をつけて」
俺は踵を返し、横断歩道を渡る。
信号が点滅する。
ふと奴の行方が気になって振り向くが
すでに雑踏の中に紛れて姿は見えない。
「連絡先を聞いておけばよかった」と
俺はiPodの音量を上げた。
奴を抱き締めた時に香った
ジャスミンの香りと
奴のかすかな体臭を思い出しながら……。■
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by nkgwkng | 2012-08-10 18:07 | 掌編小説

【掌編小説】未夏ではない君へ

窓際で一輪挿しのガーベラが
静かに歌っているよ。
それはオレンジ色。

未夏のことを思い出すのは久しぶり。
君はどうしているかな。
もう結婚したのだろうな。
僕はそれを心から祝福できない。
まだ君のことが好きみたいだから。

たまにあの日、未夏を抱いたら
僕たちは一緒に暮らしていたかと思うことがあるよ。
君はそう思わない?
好きだったのは僕だけ?

もう君に会いに行けない。
僕はずいぶん年を取ったし、
これまたずいぶんと太ってしまった。
君もずいぶんと変わっただろう。

キレイニナッタ?

それならホントに会いに行けないよ。
僕なんてただのおっさんになってしまったからね。

夏が終わろうとしています。
今年も海に行かなかった。
そうだ、君と海へ行ったこともあったね。
何もしゃべらずにただ波を見ていた。
つまらない男だと思った?
それは間違いないさ、
僕はただのデクノボー。

僕には子どもがいます。
4歳になるかわいい女の子です。
奥さんのことを愛しています。
未夏のことはやっぱり忘れてしまった。
だけどたまに思い出してもいいかな。
こっそりと思い出すからさ。

今年で37になるよ。
君は36だね。
君は僕のことなんか思い出さないだろう。
今の生活に満足して幸せに暮らしているに違いない。
そうあってほしいし、そうあるべきだ。

これは君のための小説で
だけど君が見ることは絶対にないから
誰のための小説でもない。

こんなクダラナイことばかり書いてすみません。
ブログってさ、何書いたらいいのかわかんないよね。
全部独りよがりになるような気がしているんだ。
って誰かに向かって呟く。
その誰かって君のこと。
未夏ではない、君のことです。

どうか僕を見捨てないでください。
君のそばでそっと花を咲かさせてください。
たまには心を和やかにすることができると思うから。

また来てね。
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by nkgwkng | 2012-08-09 17:12 | 掌編小説