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おわる

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ほら、終わらないことはなかったじゃん。
もう鬱だー。











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by nkgwkng | 2016-12-31 01:19 | とっ散らかった言葉

生きたくね

死にたいとか言ってるけど
俺、
癌告知されたら
怖くてビビるげさ。
彼の胸中いかなるものか。
尋常じゃないほど
怖い怖い。
だから
全力で応援したい。







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by nkgwkng | 2016-12-30 00:00 | とっ散らかった言葉

待ってる〜。

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おいらも売ってるョ。












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by nkgwkng | 2016-12-29 07:33 | とっ散らかった言葉

再会

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恋しかったよ。
また会えて良かった。












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by nkgwkng | 2016-12-28 06:51 | とっ散らかった言葉

セクシーユー

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埋めたい、そこに顔を。












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by nkgwkng | 2016-12-27 00:00 | とっ散らかった言葉

No.9/そして日々は続く

 タエコはナンバーガールのライヴアルバムを聴き終えた後、友達みんなにその素晴らしさを伝えようと電話を手にした。しかしながら、みんな、とは数えることもないほどのわずかな数だった。友達の少なさ加減をタエコは再認識する。
 〈こんなことではいけない。たくさんのイカした友達、そしてカッコいい恋人を見つけなくっては!〉とタエコが思ったかどうかは知らない。でも、タエコがアルバムを聴いて何か決心したのは間違いなかった。
 次の日、タエコは学校とバイトをサボった。久し振りにギターを弾いた。ますます下手になっていた。そのうち何回か電話がかかってきて、それをやり過ごすのは気が滅入るから(タエコは基本的に小心者)、散歩に出かけることにした。よく晴れた気持ちの良い天気ではなく、結構強めに雨が降っていた。買ったばかりのスニーカーが汚れた。かっこいい男とすれ違ったりもしなかった。立ち寄ったコンビニでは入り口に置いていたビニール傘を持っていかれた。駅前のショボイ喫茶店で雨宿り。注文したナポリタンは給食の味がした。雨は止みそうになかった。あきらめて家まで走って帰った。雨に打たれて、九十七年のフジ・ロック・フェステバルを思い出す。一緒に行ったミオは寒さで死にそうになっていた。ヤッコはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのライヴで行方不明になった。二人とも今は母親になった。ふと、切らしていた洗剤を買い忘れたことを思い出す。部屋には洗濯物がたまっていた。〈まあ、こんな日もあるわ〉とタエコは思ったのだった。

        *

 こんなふうにマサオとタエコは、平凡な日常を生きている。いつか二人はどこかで出会う? それは誰にもわからない。
 続きは九番目の話で。

2002年12月記
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by nkgwkng | 2016-12-26 00:00 | お蔵入り

No.9/捜し物はなんですか?

 マサオの日常を彩っているのは、ほんの些細なことだ。それは友達からの電話やメール、あるいは手紙。素晴らしい映画、素晴らしいマンガ、素晴らしい音楽。時にはアイスの当たり棒だったりするし、西武ライオンズの劇的な勝利だったりもする。マクドナルドで見た彼女の笑顔やナンバーガールの新しいアルバムもそうだ。
 そういう小さな幸せがマサオの日常に色をつける。他人にとってなんでもないことが、マサオを生かしている。
 でも、そんなマサオも『大人』と言われる年齢になって、日常に小さな幸せを見つけられなくなってきた。それは当たり前のことではあるけれど、マサオはそう簡単に片付けてしまうほど、まだ年老いていない。
 マサオはGと別れ、タワーレコードでナンバーガールの新しいアルバムを買い、家に向かっていた。その時、何の前触れもなくモノクロになりつつある記憶が突然、蘇る。それは二年も会っていない別れた彼女の記憶。
 彼女はマサオにとって初めての彼女だった。彼女の部屋に向かう時は、いつも待ち切れない思いだった。走って彼女の部屋まで行った。
「マサオって私んち来るとき、いつも息切らせてる」
 彼女にそう言われたのを覚えている。
 マサオは富士銀行前で信号待ちしながら思い出してみる。カシャカシャと音を立てるスライド写真みたいに彼女のことを。
 いつもブカブカのスニーカーを履いていた彼女。化粧が下手だった彼女。長かった髪をある日、突然バッサリ切った彼女。料理ができなかった彼女。しずかちゃんみたいな声の彼女。笑い出すと止まらない彼女。怒ると手のつけられない彼女。長電話が嫌いだった彼女。ベン・フォールズ・ファイヴが好きだった彼女。マサオを愛していた彼女。
 思い出してみて、特別切なくなったりはしなかった。マサオの頭の中に彼女がただの映像として映っただけだった。何の感情も思い起こさせない薄っぺらな映像。
 でも、彼女といた時の方が小さな幸せをたくさん感じていたかもしれないということにマサオは気がついた。〈恋をしろってことですか〉。マサオは心の中で呟く。
 待っていた信号が赤から青に変わる。マサオは信号を渡ろうとする。そこでマサオは、はっとした。ラブ・ストーリーは突然に。マクドナルドのあの女のコの姿を、横断歩道の向こう側に見つけたのだ。マサオは彼女に声をかけたかった。だけど、なんて声をかけたらいいのかわからない。彼女は駆け足で信号を渡ろうとしている。マサオはかける言葉を必死で考える。でも、何も思い浮かばない。時間を止めて、ふさわしい言葉をじっくり考えたかった。でも、時間は止まらない。ただ彼女とすれ違う瞬間、すべての音が消えて、スロー・モーションになっただけ。そんな気がしただけ。すれ違った後、マサオは振り返り、彼女の後ろ姿を見ていた。すぐに信号は赤になる。マサオは横断歩道を渡りきって、また振り返った。でも、彼女の姿は人込みの中に消えてなかった。
 声をかけていたら彼女と恋に落ちていた?〈そう、うまくはいかない〉とマサオは思う。きっと有り得ない。〈だけど、そこに何かドラマを期待しなくなるのはどうなのよ、人として〉ともマサオは思った。
 マサオは数秒前のことを少し後悔。でも、ナンバーガールの新しいアルバムを思って、すぐに立ち直ったのだった。

2002年12月記
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by nkgwkng | 2016-12-25 00:00 | お蔵入り

No.9/ときめきと勘違いは生きていくために必要

「なあ、レジのコ、かわいくなかった?」
 マサオは席に座るなりGにそう言った。Gはマックシェイク(バナナ味)を一口飲んでからそれに答える。
「そうだね。そんなかわいいってわけじゃないけど、笑顔がね」
「俺、ときめいちゃったよ」
「ときめいた? いいなあ、ときめくの。俺、最近、めっきりないな」
「なんだよ、そんなこと言っちゃって。彼女とうまくいってないのかよ」
「そういうわけじゃないけど、特別いいってわけでもない。もう長いからね、我々」
「長いよね、君達は」
 マサオとGはバイト帰りにマクドナルドへ来ていた。駅前ということもあり、店の中は騒々しい。女子大生が楽しそうに笑い合っている。予備校生達はテーブルにノートや参考書を広げているが、明らかに勉強している様子はなかった。話すことに夢中になっている。ギターケースを脇に置いた連中も騒がしくて、どうやら音楽の話で熱くなっているらしかった。マサオはマックシェイク(バニラ味)を飲んで話を続けた。
「さっきのコ、『やまだかつてないテレビ』に出てた女のコに似てなかった?山田邦子と『さよならだけどさよならじゃない』って曲歌ってた」
「えー、誰なのそれ? 全然わからないよ。そもそも『やまだかつてないテレビ』も見てなかったし。それ、いつ頃の曲?」
「知らない? 俺が中学卒業する時に流行った記憶があるから、Gは高一?」
「高一。じゃあ、もうその頃は部活でそれどころじゃなかったよ。朝から晩まで野球していた」
「G、野球部だったんだよな」
「Gっていうのも野球部の先輩につけられたんだよ。Gっていうのは『自慰』のことなんだよね。自分で慰める『自慰』。先輩がふざけてつけたの」
「カッコワルッ。Gって響きカッコいいなって思ってたのに」
「みんなそう言う。でも、実はGじゃなくて『自慰』っていう…」
「いやー、Gも見かけによらず、背負ってんね、暗い過去を」
「でも、笑えない?」
「笑える」
「でしょ。そういうわけで、その曲もそのコのことも知らない」
「そうか、知らないか。似てると思うんだけどな」
「てゆうか、最近ときめき過ぎじゃない?」
「そお?」
「そうだよ。この間も無印の人に惚れたとか言ってたし、あと『サムタイム』だっけ? 喫茶店の。そこのお姉さんがいいんだわーとか言ってたし」
「いいよー、あのお姉さん。昨日なんか親しみを込めた笑顔で『こんにちわ』って言われたもん、向こうから。俺に気があるのかね」
「ないない。仕事用の笑顔だよ」
「そんなこと言うなよ。いいじゃん、そのくらい勘違いしたってさ。基本的に寂しがり屋なんだよ、俺は」
 そうマサオが言うとGは「確かに」と言って深く頷いたのだった。
 地下一階の店内は至るところで盛り上がっている。タバコの煙がすごい。マサオはマックシェイクを飲み「やっぱ俺もバナナにすれば良かったよ」と呟いた。
 「ナンバーガール、今日でしょ」
 Gはストローを噛りながら言う。
「そう。帰りにタワーで買う。実はすごい楽しみなんだよね。待ち切れないって言うの? こういうの久し振り」
「あー、それなんとなくわかる。俺も中学の時、『ドラクエⅢ』やるの待ち遠しかったな。買ってから家に帰るまでが遠く感じてさあ」
「そうそう。エロ本とか買って帰る時もそうじゃなかった?自転車、全力でこいでんのに全然前に進まないの。気持ちだけはもう家に着いてて」
「勇み足状態」
「で、そういうときに限ってクラスのヤツに会ったりするんだよね。あれ結構、修羅場」
「バカだよね」
「バカだった、中学ん時は」
「でも、最近、そういうのってあんまりない。大人になったってことですかねえ」
「それはなくしちゃいけない感覚でしょ、人として」
「てゆうか、エロ本とナンバーガール、並べて語るのもどうかと思うよ」
「そりゃそうだけど」
 マサオとGは三十分くらいそこで話をしていた。女子大生達と予備校生達は先に帰った。でも、次々と若者達が騒々しさを持ってやってくるので、店内は静かになることがなかった。帰り際、マサオはレジを見る。彼女は相変わらず忙しそうに働いていた。でも、その笑顔は疲れを知らず、マサオはまたしてもときめき、未練を残して店を出たのだった。

2002年12月記
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by nkgwkng | 2016-12-24 00:00 | お蔵入り

No.9/スマイルはお金で買えない

 ナンバーガールのライヴを見て、とにかく何かを始めたい気分になったタエコ。その方程式は「ロッキー4」を見終わったあと、無性に山方面に駆け出したくなるのに似ている。
 次の日にタエコはギターとアンプを買った。予算は五万円だったのに、八万円分買ってしまう(ローン六回払い)。
 そういう事情もあり、タエコはマクドナルドでアルバイトを始めた。思っていたより忙しく、日々があっという間にすぎていった。
 スマイルは初め、うまくできなかった。でも、日を重ねるうちに良くなっていった。店長に「笑うとなかなかかわいいね」と言われて(それは彼の作戦)、それをきっかけにタエコはうまく笑えるようになっていった(彼女は普段からそういう単純な性格)。タエコがアルバイトを始めてから、何人かの友達に「かわいくなった」と言われたのは、そのスマイルのおかげ。それからタエコ自身もタエコのまわりも、少しづつ変わっていった。
 十一月二十二日はタエコの二十二歳の誕生日で、どこから情報を仕入れてきたのか知らないが、同い年のバイト君にタエコは突然プレゼントをもらったのだった。
 「何で私の誕生日知っているの?」
 ありがとう、と言う前にタエコはあからさまに不審そうな顔をしてそう言った。
「前、そんな話したことあるから」
 どことなく落ち着かない表情で彼は言った。誕生日の話をした覚えはタエコになかった。
 その数日後、タエコはその男から合コンに誘われる。マクドナルドチーム四名とセブンイレブンチーム四名による謎の合コン。それは、タエコと同い年のバイト君とセブンイレブンの代表君が、高校時代からの友達ということで実現したのだった。タエコは合コンに行ったことがなく、気は進まなかったのだが、断わり方を知らないので行くことになってしまった。当日、生粋のスマイリスト達の中で最も素晴らしかったのはタエコのスマイルで、それはなぜかというと、他のメンバーがアルコールによっていつも通りのスマイルができなかったからであった。タエコは緊張のせいでほとんど酔わなかった。もちろん楽しくなんてなかった。
 その帰り、タクシーでバイト君に送られる。彼はタエコの部屋に行きたがっていたが、何とか彼を振りほどいて、部屋に逃げ込んだ。部屋に入るなりタエコは気持ち悪くなって、トイレで吐いた。それを流した水の音がやけにうるさかった。ため息。気を取り直して立ち上がり、顔を洗い、歯を磨く。テレビをつけたら「ジャッジ・ドレッド」という深夜映画がやっていた。シルベスター・スタローンが出ていた。面白くなかった。
 その数日後、ハヤシが恋人(男)と店に来た。彼らは「ダブルチーズバーガーセット」と「フィレオフィッシュバーガーセット」を注文した。去り際、ハヤシは声に出さないで「がんばって」とタエコに言った。それを見たタエコも声に出さないで「ありがとう」とハヤシに言った。
 その夜、タエコの部屋にハヤシから電話がかかってくる。「タエコちゃん、仕事モードのスマイルだったよ」とハヤシは言った。タエコは言葉にはしなかったけれど、それがすごくショックだった。ハヤシが店にやって来た時、タエコは本当に嬉しくて笑ったから。
 何かを手に入れると何かを失う。
 タエコはスマイルを手に入れたばかりに、無器用な笑顔を失った。でも、新しいスマイルがタエコの日常に彩りを与えていることは間違いない。
 ところで、ギターはGコードとCコードを覚えた。でもFコードがうまく押さえられなくて、今はあまりギターに触ることがない。
 そんなある日、ナンバーガールのライヴアルバムが発売された。あのライヴの模様が収録されたアルバムだ。
 「いらっしゃいませ、こんにちは!」
 その日もいつも通りのスマイルでタエコは働いた。ナンバーガールのことはすべて忘れて(無理矢理)。客は途切れることなくやってくる。ものすごい量のハンバーガーが、ものすごいスピードで消えていく。それと同じだけタエコもスマイル。それは一円にもならないスマイルだった。そして、それは彼女自身あまり好きではないスマイルだった。
 でも、そのスマイルにちょっとした恋をしてしまう男は案外多かった。ある男は彼女のスマイルを見て、それまでの苛立ちを忘れてしまうし、ある男は何日かあとに彼女のスマイルを思い出して、なんだか得したような気分になるのだった。そんなふうにタエコはあまり好きにはなれないスマイルで、見知らぬ男達の一日を彩っているのだった。もちろん、タエコはそのことを知らない。

2002年12月記
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by nkgwkng | 2016-12-23 00:00 | お蔵入り

No.9/涙を流しているのは誰だ!

 タエコはライヴが始まってから、ずっと汗が止まらなかった。三曲も終わらないうちにクタクタになってしまい、日頃の運動不足を悔む。もちろん、それでも演奏は容赦なく続いた。彼らは気合い十分だったし、演奏も素晴らしく、フロアも興奮状態で室温は始まる前と比べて間違いなく五、六度は上がっていた。汗が蒸気となって立ち上がる。鋭角のサウンドがそこにいる全員を一人残らず滅多斬りにする。彼らはMCをほとんど入れずにテンポよく演奏を続けた。曲が重なるにつれ、タエコの体が悲鳴をあげた。けれど、タエコはそこで飛び跳ねることをやめられなかった。意識がどんどん吹っ飛んでいった。でも、反対に感覚は研ぎ澄まされていった。
「あのコは何でも知っていたんです。…あのコは十七歳だったんです。夢の中で…十七歳だったんです…」
 中盤に差しかかった頃、ヴォーカルの向井がそう言って始めたのが「YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING」だ。歌の中の彼女は十七歳で、幼い頃から多くのことを知っていた。タエコはそんな彼女のことを想像してみる。そう、例えば彼女はこんな十七歳。
 色白で髪が長くて、勉強はそれほどできるわけではないが、真ん中くらいの成績。なかなかの美人で、笑顔は大人っぽく、運動はからっきしダメ。クラスの出席番号は九番。英語のマツオ先生を密かにカッコいいと思っている。「トレインスポッティング」の時のユアン・マクレガーに本気で恋をした。それを友達に言ったら、冗談だと思って信じてくれなかった。初恋は小学校六年の時。村上春樹が好き。岡崎京子が好き。安野モヨコは嫌い。セブンイレブンよりファミリーマートが好き。ドラえもんはあまり好きではない。五歳の時に鉄棒から落ちて、左眉毛の上を縫った。左手の甲にホクロがある。A型。十一月生まれで夏が嫌い。スノーボードはできない。英語もできない。だから、外国人は苦手。でも、インド料理は好き。ナンが好き。ダイエットは長く続かない。特別太っているわけでもない。虫歯が一つある。親に言えない秘密が二つある。眠れない夜がある。万引きをしたことがある。悲しみを知っている。吉祥寺においしいカレー屋を知っている。一人でいることが多い。わがままな、泣き虫な、独り善がりな、夢見がちな、欲張りな、控え目な、楽しげで寂しげな、そんな十七歳。
 気がつけば、それはタエコ自身に近かった。ただタエコは二十一歳で、いくつかの悲しみしか知らなかった。小学生だった頃に飼っていたインコの逃走、祖母の死、失恋。彼女が知っている悲しみとはそれくらいのものだった。けれど、彼女は知っていた。悲しみを知らなければ逞しくなれないし、生きていけないということを。
 現実は厳しい。
 思考能力がわずかに残る意識の中でタエコはそのことを思い知った。なぜか泣きたかった。感覚が敏感になっていたせいもあるだろう。でも、タエコは泣かなかった。戦っている人は決して泣いてなんかいないということを、本能が察知していたから。
 でも、その次の曲が大好きな「透明少女」で、結局号泣。鼻水を流しながら号泣して、なのに笑顔だった。〈ひどい顔してる!〉とタエコは思ったけれど、その時の彼女はキラキラ光っていた。ダイヴしている人も歌っている人も、泣いている人も暴れてる人も、みんなそうだった。キラキラがフロアを包み、誰もがすっかりヤラれていた。
 それは二度と有り得ないような奇跡の瞬間だった。九死に一生を得るくらい。ジョン・レノンとポール・マッカートニーが出会ったくらい。人がタイムマシーンを開発するくらい。
 そして、その奇跡はその後も続いた。空気は熱さで膨張し、照明の光は汗と蒸気と一緒に飛び散った。ダイヴ、ダイヴ、ダイヴ。フロアは制御不能。ナンバーガール自身も意識が吹っ飛び、コントロール不能。でも、決して暴走することはなかった。彼ら自身の中の神がかり的な存在が、彼らをコントロールした。一音一音が正確に鳴り、そこにいる者すべてを突き刺した。
 ライヴ終盤「日常に生きる少女」が演奏される。ものすごい音圧で、ギターとベースとドラムの音がグッチャグッチャに鳴る。フロアにまた人が押し寄せる。押し寄せる隙間なんて全くないのに。
 その後のことをタエコは覚えていない。その数十分間がすっぽりと抜け落ちているのだ。魂が肉体を超えて、タエコはすべてと一体になった。ギターの轟音になったり、向井の声になったり、フロアを包み込む熱気になった。始まりも終わりもない無の存在になって、タエコは踊り続けたのだった。

2002年12月記
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by nkgwkng | 2016-12-22 20:56 | お蔵入り