【掌編小説】貴様、いい加減にしろ

ハンドルを握る魚々子(ななこ)の体は腐っていた。
出血もひどい。
白いTシャツの前側も後ろ側も
ほぼすべて赤で染まっている。
きれいな赤ではなく
ドス黒い赤。
首筋に噛み千切られた大きな傷口。
そこから流れる血は止まることがない。
Tシャツのその白が
赤に染められるのも時間の問題。
魚々子はどこへ向かっているのか。
それは自宅。
勤務先のペットショップから車で20分のところにある。
今日から2学期が始まったが、もう4時過ぎ。
小学1年の俊太郎は家に帰っているだろう。
無事かどうか知りたい。
なにせ街は彷徨える死霊であふれているから。
田舎だから東京に比べると数は少ない。
しかし奴らは必ずいる。
善良な市民に混ざりこんでいる。
魚々子はトリミングしていた犬の
飼い主に噛まれた。
同僚がレジ付近で襲われているのを助けようとして噛まれた。
でもなぜかすぐに奴らのようにはならなかった。
だからこうして今車を走らせている。
いつか奴らのようになる予感を感じながら……。
コンビニのある角を曲がると我が家。
玄関に突っ込みそうな勢いで車を停める。
「俊ちゃん!」
玄関を開けるなり息子を呼ぶ。
だが返事はない。
いつもだったら「おやつまだー」と言って
駆け寄ってくるくせに。
心配になって家中を探す。
リビング、いない。
トイレ、いない。
庭、いない。
二階へ上がる。
ほっ。
するとそこに俊太郎はいた。
寝室で眠っていた。
安心する。
が、一体自分は何をすれば良いのかわからない。
この子のそばにいてあげたいが
いつ自分が奴らのようになるかわからない。
奴らのようになったら俊太郎だろうが誰だろうが
構わずにその肉を食い千切るのだろう。
葛藤する。
か っ と う す る 。



……もう書くのが面倒くさくなった。
続きは自分で考えてください。

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by nkgwkng | 2012-08-27 23:09 | 掌編小説
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