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【400字小説】餃子

約束の時間になっても多恵は
達郎の部屋にやってこなかった。
その代わりにやってきたのは
ラーメン屋の出前、なぜか餃子5人前。
達郎が「頼んでないです」と言うと、
出前のお兄さんはしぶしぶ帰っていった。

約束の15分オーバーの8時45分、
また誰かがドアをノックする。
が、それはまたしても、
ラーメン屋のお兄さんだった。

「店の者がこちらだと言うんですけど…」

しかし、達郎は餃子など頼んでいないので、
丁寧に断る。
お兄さんは泣きそうな顔で帰った。
5分後、また誰かがドアを叩く。

「また餃子かよ」と呟いたが、
そこにいたのは多恵だった。
しかも、手にはおみやげの餃子。
達郎は思わず笑ってしまう。

「何、笑ってんの?」

「まあ、とりあえず中入んなよ」

ドアを閉めると、餃子のいい匂いが玄関にこもる。
「さっき、出前が来てさ」と、
達郎はついさっき起こった出来事を話し始めた。■
by nkgwkng | 2013-11-22 17:38 | 400字小説
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