人気ブログランキング | 話題のタグを見る

【400字小説】圏外

冬の寒いある日、千尋は合コンに参加した。
隣には、元野球部だったという周一が座った。

「わたしね、高校生の時
開会式で、周一君の学校の
プラカード持ったんだ。
周一君て何歳?
……21歳?
じゃあ、同い年じゃん。偶然ー」

周一の反応はあまり良くない。
それは何のせいなのか、
千尋にはよくわかっていた。

わたしがブサイクだから。

そこにいた男の子4人は、
全員、朝香を狙っていた。
彼女がダメだと悟れば、
和歌子、彩に彼らは照準を変えるだろう。
それでもダメなら、今日のところは諦める。
千尋は4番手にもならない。

「女の子なんだから、いつも笑っていなさい」

母親によく言われる。
生まれて以来ずっとだ。
最近ようやくその意味がわかってきた。

「お前、笑えばかわいいな」

合コン終了間際、周一に言われた。

「へへ、ありがと」

千尋は感情を押し殺して笑うしかなかった。■
by nkgwkng | 2013-12-09 06:46 | 400字小説
<< 【400字小説】現実 【400字小説】埃 >>