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【400字小説】ロックンロール

岡沢じゅんくんは演奏中、
酔っ払いに肩を噛み付かれた。
打ち上げの際、その話で仲間と盛り上がる。

「よく演奏止めなかったね」

「だってロックンローラーだもん」

冗談半分でじゅんくんは笑う。
その笑顔は印象的。
誰だって癒されるに違いない。
例えそれが悪魔やゾンビだったとしても。

         *

次の朝、目を覚まして
家のテレビをつけると
長野駅前でゾンビの群れが
市民を襲う映像がリピートで流されていた。
テレビにかぶりつく僕。
約30分後、生中継映像に切り替わる。
ゾンビが、ギターを持った青年を
取り囲んでいた。
じゅんくんだ。
木製のカウンターチェアに立って歌っている。
ゾンビはじゅんくんを襲わない。
それどころか歌に聴き入っている様子。
歌い終わるとゾンビから
拍手が沸き起こった。
その群れにじゅんくんは
「Yeahhh!」と叫びながらダイブ。
誰もそれを受け止めてくれなくて
アスファルトに落下した。
でもその日の夜、
じゅんくんは右腕にギプスをして
予定通りライブハウスで歌った。
その姿こそロックンロール。
by nkgwkng | 2013-12-18 05:30 | 400字小説
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