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豆腐(絹ごし)

抱きしめると未夏のカラダは冷めていた。
雨に打たれたせいか。
でも、コンビニから200mほどを
走ってきたから、火照っていても
おかしくないと思った、6月だし。

「あたし、吸血鬼だから」と未夏は笑って。
「シャワー浴びなよ」と冗談だと
受け流して言い放つと
「一緒に入ろうよ」って未夏。
エロい気持ちにもならずに
お湯を張って入ろうってなって。

冷蔵庫に6本の缶ビールがあった、
彼氏の買ったヤツ。
飲んだことを彼氏は怒るだろうけれど、
買えばいいやって軽はずみ。
浴室にそれを持ち込んで、乾杯した。
どんだけ好きなんだよ。
未夏は酔っ払って何を言ってもゲラゲラ笑う。
そんな彼女をフッた男が憎々しくなったし、
愚かだなって罵りたくもなった。

「未夏にお別れ言うなんて冴えない男だよ」
「そんなこと言ってくれるの、
みーちゃんだけだよ。結婚して!」

それで軽い気持ちで
「いいよ」って返事したら、抱き寄せられて、
やっぱりまだ未夏のカラダは冷たかった。

◆◆◆

by nkgwkng | 2023-06-07 07:00 | 400字小説
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