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移転のお知らせ

誠に勝手ですが
当サイトを離れることに致しました。
今後は以下にて創作を続けていく所存です。
今後ともよろしくお願い致します。




# by nkgwkng | 2024-01-01 07:00 | 雑感<日記>

さようなら爆弾

サイタは今年中に戦争が
終わらなくて屈辱的な気持ち。
一国の首相でもなかったし、
影響力のあるミュージシャンでもなかった。
だからこそ、強く「戦争反対!」。
パソコンの《せんそう》の予測変換が
一発で《戦争》と出て来なくて憤るくらいだった。
船窓から眺めているような戦争じゃないのだ。
一刻も早く停戦させねばとイキっている。

「サイタくんは押し付けがましい」と
ミドリに言われたのをきっかけに別れてしまった。
大切な恋人だっただけに
価値観の相違は身を切られるようなつらさだった。
「プーチンは吸血鬼かもしれない」と
本気で信じ合ったつもりだったのに、裏切られたって。

別れを告げられたその日は
文字通り食事が喉を通らず、
でも翌日にはもりもり食べて腹をクダした思い出。
水洗便所と一緒に思い出は流れた。
残念ながらプーチンは吸血鬼ではないから、人間の仕業。
同じ人間なのにって悔しくて悲しくて、
吸血鬼になりたいってサイタは心から。

◆◆◆

# by nkgwkng | 2023-12-31 07:00 | 400字小説

最後の最後

最期に食べる食事はマクドナルドが良いって
タカミネが言うので、ヨウヨウは物悲しくなってしまった。
それは本当にシャバで食べる食事の
最後の選択になるからだった。

タカミネは吸血鬼を殺すという死刑になる罪を犯して、
ヨウヨウはそれを知った上でハンドルを握り、逃走中。
夜の東北自動車道を時速100キロで安全運転。

「てりやきマックバーガーもいいけど、
やっぱりビッグマックでシメなきゃだよね」とタカミネ。
「なんか悲しいから、もっとパ~ッとさ、
盛り上がるもの食べようよ、焼き肉とか、
寿司食べ放題とか」とヨウヨウ。

タカミネは人の話を聞かないから、
「両方頼むのは野暮なんだよ」と野暮なことを言った。

すると突然後ろからパトカーらしき車両が接近。
アクセルを全開に踏み込んで加速。
時速140キロに到達したとき、
今度は吸血鬼が唐突にフロントガラスに
張り付いてきたので視界を失ってスピン。
まわる世界線の先で陽が上ろうとしていたので、錯覚。


◆◆◆

# by nkgwkng | 2023-12-30 07:00 | 400字小説

田島貴男とふたりきり

アケミは田島貴男を知らなかった、今時の高校生だから。
もちろん、吸血鬼並みにセクシーに歌う姿を
アケミは知る由もなく。

母が田島貴男にインタビューしたことがあるにはあったが、
記憶の彼方にある程度。
どう話を切り出そうかと考えていた。
ロケバスにふたりきりになり無言が数分経っていた。

すると「テレビの仕事久しぶりだわ~」と
田島貴男が話し始めた。

「本業じゃなく食レポで出演っていうのが屈辱だねえ。
こんな言い方失礼だけど。
あなたはわたしのこと、知らないでしょう?」

図星なことを聞かれて一瞬、言葉に詰まったが、
「母が元音楽ライターで何度も田島さんに
インタビューさせてもらったと聞いています」
とアケミは切り返す。

「お母さんのお名前は?」

アケミはそれに答える。
すると田島貴男は顔を真っ赤にするほど照れたかと思ったら、
小爆発してコウモリに変身。
アケミはそれを捕まえて、
ロケバスから空に解き放ったのだった。

◆◆◆

# by nkgwkng | 2023-12-29 07:00 | 400字小説

希望消えない

タカハラは吸血鬼だった父からもらった腕時計を
2nd streetで売っ払ってしまっても、
なかった罪悪感。

父は吸血鬼のくせに死んだ。
炎天下外出して、爆発。
親類からは疎まれ、世間からは蔑まれた、
不名誉な死。
物心つく前に父に拾われて
家族の一員にしてもらったのに、
そんな感情を抱いてしまうことにさえ、
罪悪感は覚えない。

残された遺族たちは父のことを思い出すからという理由で、
タカハラを追い出した。
彼をそれまで犬のように可愛がっていたのに、
父が死んだ翌日には
「ああ、出て行ってくれ」と沢田研二。
腕時計を売ったのは生活に困ったからだ。
幸い10万円の下取り額を叩き出したので、
普通通りに食事しても1ヶ月は優に暮らせそうだった。
にもかかわらず、タカハラは新宿歌舞伎町へ繰り出し、
1時間で10万円を使い果たした。
その上にぼったくられたので、
全然足りないという悪夢。
「お父さん…」と気がついたら呟いていて、
ようやく気づいた、ファザコンだと。

◆◆◆

# by nkgwkng | 2023-12-28 07:00 | 400字小説